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アリー・ムバーラク 『エジプト新編地誌』 データベース




(本データベースについて)
 アリー・ムバーラク著『エジプト新編地誌』は、エジプト近代史研究の資料の宝庫である。 全20巻からなる浩瀚な本書は、1886-88年(ヒジュラ暦1304-06年)にカイロのブーラーク印刷所で出版された。 書誌データは下記の通りである。

علي مبارك ، الخطط التوفيقية الجديدة لمصر القاهرة ومدنها وبلادها القديمة والشهيرة ، بولاق ، المطبعة الكبرى الأميرية ، 1304-1306هـ (1886-1888).
‘Alī Mubārak, al-khiṭaṭ al-tawfīqīya al-jadīda li-miṣr al-qāhira wa-muduni-hā wa-bilādi-hā al-qadīma wa-al-shahīra, Būlāq, al-Maṭbaʻa al-Kubrā al-Amīrīya, H.1304-06 (1886-88).
アリー・ムバーラク著『エジプト新編地誌』の正確なタイトルは、上に示したように『タウフィーク王治世下の誉れあるエジプトと、 その由緒ある著名な町や村の新編地誌』である。ここで「地誌」という訳語を充てたヒタト (al-khiṭaṭ : الخطط)とは、「地誌と歴 史と伝記とを総合した」エジプト史の固有の叙述スタイルを指す。近代以前に書かれたいくつかの「地誌」の中で、もっともよ 知られ資料的価値も高かったのが、マムルーク朝期の年代記歴史家マクリーズィー(1364頃―1442)によるものである。 アリー・ムバーラクの『新編地誌』は、「新編」の名に示されるように、マクリーズィー以来絶えて久しかったエジプトの「地誌」を 五世紀ぶりに復活したものであった。
この書物を著したアリー・ムバーラク(1823-1893;ヒジュラ暦1239-1311)は、ムハンマド・アリー朝の開明官僚であるとともに、 当時、最大級の文人であった。彼は、いわば前近代のイスラム的知識人と近代知識人の橋渡しをする人物だったともいえる (佐藤次高「アリー・ムバーラクのエジプト農業社会論」『アラビア研究論叢―民族と文化―』日本サウディアラビア協会・日本 クウェイト協会1976年を参照)。
本書は、全20巻からなり、最初の1巻から6巻がカイロ、次の第7巻がアレキサンドリア、続いて8巻から17巻までの10巻分が 地方の著名な町や村々、18と19巻がナイル川の治水、最後の20巻が貨幣史に充てられている。本書が依拠するのは、ヘロ ドトスなど古代ギリシアの著述家に始まり、「新編」のための「原本」であるマクリーズィーと、その後の年代記作家たち、さらには ナポレオンのエジプト遠征隊が作成した『エジプト誌』の原資料などからなる、膨大な文献群である。また、文部省や公共事業 省などの大臣を歴任した著者は、執筆に当たって、当時の部下の官僚たちから直接、情報を収集することができできた。カイ ロの街区や宗教施設に関する細かい記述、ウラマーを中心にした膨大な評伝集、ナイロメーターなどの灌漑技術の情報、さら には地方の慣行や伝説などの興味深い話も各所に挿入されている。
『エジプト新編地誌』のデータベースの構築は、本資料の豊富な内容にアクセスする手がかりを内外の多くの研究者に提供し、 エジプト近代史および中東研究全体の発展に寄与することを目的にしている。

さて、この『エジプト新編地誌』全20巻のうち、今回このデータベースが収録するのは、第1巻から第6巻までのカイロを扱った部分 である。第7巻以降については、今後の収録と検索システムの拡充を計画している。現在のデータベースでは、検索画面からフリ ーワード検索と地名情報(شارعなど)人名情報(امامなど)施設名 情報(مسجدなど)からの検索が可能になっている。これらの検索 語は、各巻に付けられている索引を基本的な資料とした。

(謝辞) 本データベースの元となる原資料は、アジア経済研究所図書館の所蔵になるものであり、デジタル画像化とその公開においては 同研究所の快い承諾を得たことを感謝したい。
また、このデータベース作成に当たっては、その準備のための基礎的作業では、東京大学東洋文化研究所東洋学研究情報セ ンタープロジェクト「イスラーム地域文献資料データベース構築」(平成14・15年度)および文部科学省科研費(基盤研究B) 「近現代アラビア文字圏データベース形成の手法の研究」(平成13~15年度:課題番号13490008)、またその成果公開に当 たっては文部科学省科研費(研究成果公開促進費)「アジア多言語デジタルライブラリ」(平成16年度:課題番号168143)の 支援を得た。ここに謝意を表したい。
本データベースのデータ入力と整理調整の作業過程においては下記の方々から協力をいただいた。氏名を記して改めて謝意を 表したい(五十音順)。
飯野りさ氏、梅内正仁氏、江川和子氏、斎藤美津子氏、田村幸恵氏、松本陽子氏
また、検索システムの設計については、設計者の村瀬一志氏に謝意を表したい。

2004年10月

東京大学東洋文化研究所東洋学研究情報センター
長沢 栄治

なお、本データベースへのお問い合わせは、下記のメールアドレスまでお願いします。


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